「なぜ?」は、なぜ無いのか?

今日、当社のクライアントが全社的に休みとなっていた。

私の耳に入ったのは昨日のことだったので、うちの社員に「どうして休みなのか知ってる?」とたずねると「知らない」と言う。一応先方の社員の方に聞いてみるように言ったのだが、どうやら先方の社員も理由を知らないらしい。私はうちの社員にさらにたずねた。

「先方は誰も知らないの?」
「リーダーは知ってるかもしれませんが、特に理由は教えてくれなかったそうです」
「じゃぁ『理由を教えてください』って言えばいいのに。なぜ聞かないんだろうね?」
「教えてくれないことに対して、敢えてしつこく聞くと怒られるからでしょう」
「でも会社は社員に説明義務があると思うし、社員にはそれを知る権利があると思うんだけど」
「別に休みがもらえるのだから、それでいいんじゃないですか」

ふーん、そんなものなのか、と思う一方で、やはりどうもしっくりこない。

「ちなみに、君はその理由を知りたいとは思わない?」
「はい。特に思わないです」
「どうして?」
「うーん・・・習慣でしょうか?」

私はこれ以上うちの社員とその話をするのをやめた。理由を知りたければ、あらためて先方の日本人管理職の人にでもたずねれば良いことだ。だがこのことで私がふと気が付いたのは、中国においてはこういうことが良くある、ということだ。

つまり
●特に理由を説明されることなく何かが突然実行され
●その影響下に置かれる者も敢えてその理由を問わないで粛々と従う
ということだ。

そして、多くの中国人たちはそういうことに慣れている。だが、私のような外国人はなかなかこういうことがうまく理解できない。なるほど、私が日々の仕事の中で時々無性に苛立ったりすることの原因のほとんどは、この習慣によるところが大きいのかもしれない。

実はこの手の出来事には次の2種類がある。

A:その結果こちらが特に不利益を被ることがない場合
B:その結果こちらに何らかの不利益が生じる場合

そして多くの中国人はこれら2種類の結果に対してそれぞれこう答えて納得する
A:別にいいんじゃない
B:しょうがない

Aの場合は別にいいだろう。私だって不利益を被らなければ特に事を荒立てるつもりもない。ただしかし、それでも理由は気になる。知りたくなる。これは純粋な好奇心だ。では、中国人は好奇心が少ないのかと問われれば、答えはNOである。たとえば通りでケンカや交通事故などが起こるとあっという間に黒山の人だかりができる。これは恐らく旺盛な好奇心以外のなにものでもないだろう。だが冒頭で述べたクライアント会社のような事例になると、途端にその旺盛な好奇心は陰を潜めてしまう。いや、知りたいという欲求はあるのかもしれない。でもいいじゃないの、休みもらえたんだから。上が理由を教えてくれないってことは、なんか教えたくない理由があるんだよ。そんな感じで全てをそっとおさめてしまうのだ。

Bの場合はなかなかそういうわけにもいかないと思うのだが、実はそうでもないらしい。私なら最終的に結果を受け入れ従うにしても、せめて理由が知りたい。なぜそうなるのか?その理由に納得はできなくても、せめて理解はしたい。そうでなければ寝付きが悪い。でも(あくまで私の知る限りにおいてだが)多くの中国人たちは、こういうときにも「しょうがいよ」でさらっと済ませてしまう。物事の理由や原因を知ることに関しては消極的、あるいは無関心であることが多い(ような気がする)。話を聞いてみると、子供の頃からそういうふうに教育されてきたから、という人もいる。世の中には触れてはいけない領域がある。決まったことや過ぎたことをとやかく言ってもしょうがない。それよりは目の前のことに全力を尽くそう。また起きればそのときはそのとき。また頑張ればいいじゃないか。そんなニュアンスかもしれない。

たとえば日本人は仕事でトラブルが生じた場合、まずその解決と対応を急ぐとともに、その原因と過程を精査・分析し、次に同じようなトラブルが起きないように対策を練り、マニュアル化させ周知徹底を図ることにも同じように注力する。医療で言うなら「予防医学」に力点が置かれる。だが中国人は仕事でトラブルが生じた場合、徹底してその解決と対応に全力が注がれることが多い。つまり「治療医学」が中心なのだ。日本と中国の比較文化論においてよく「日本人は考えてから走るが、中国人は走りながら考える」と言われる点である。どちらにも長所と欠点がある。だから一概にどちらが良いとか悪いということは言えないが。

私も仕事の中で、社員から報告が上がってきたときに「なぜそうなるの?」とたずねたときに、なかなか明瞭な回答が返ってこないことが、まま有って苛立つことも多い。挙げ句の果てには「そういうものです」などという回答さえある。これがどうでも良いことならそれでも良いのだが、仕事である以上「はいそうですか」というわけにはいかない。仕事で重要なことは、何事においても「問題意識」を持つことである。目の前に置かれた現状に対して「真偽」「理由・原因」「背景」「影響」などを精査することで、ベストな結果やさらなる品質向上、その結果としての信頼性向上へとつなげることができる。だが「問題意識」というのは、訓練され習慣化されていなければなかなか一朝一夕に身に付くものではない。そして多くの者たちはその訓練や習慣化とは無縁で大人になっている。

中国に進出した日系企業の多くが人材教育で経験するジレンマのひとつであろう。

(み)

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テーマ : 中国
ジャンル : 海外情報

不毛なお願い

今日、会社を登記してある区の税務局から電話があった。会社の電話番号宛ではなく、私の携帯電話にである。

以前から税務局からは、会社の税務処理関係のことに関して私の携帯電話に直接かかってくることが何十回とあった。私は中国における税務処理の専門的な話を、しかも中国語で話せるほどの語学力はないので、電話がかかってくるたびに「税務関係の話なら、私ではなく当社の財務担当者と直接話をしてほしい」と、すでに何十回もお願いをしてきている。そしてそのたびに、会社の電話番号と財務担当者の氏名、さらに必要とあれば財務担当者の携帯電話番号まで、何十回と税務当局には伝えてあるのだ。税務局側はそのたびに「あぁわかったわかった」と生温い返事を繰り返すのだが、今でも相変わらず私の携帯電話に直接かかってきては、毎度毎度同じやりとりを私と繰り返すことになる。どうやらいつまでたってもまったく私のお願いを聞き入れてくれる気配はない。

おまけに民間のサービス機関などと違って、お役所の人間というのはおよそどサービス精神に欠けている人が多く(当然といえば当然なのだが)、こちらが外国人だろうが何だろうがおかまいなく、ものすごく聞き取りにくい上海訛りの中国語で一方的に話してくるので、ますますこちらは聞き取れない。これが仮に銀行などであれば、こちらが外国人であるということがわかると、ゆっくりと丁寧に、且つ教科書的なわかりやすい中国語(標準語)で話してくれるので、私レベルでも割と話を理解することができる。しかも私が理解できない言葉があると、別の言い方などで懇切丁寧に説明してくれたりもする。そういう意味では、国有企業である銀行のオペレーターでさえ、そのサービスレベルは以前と違って格段に向上してきているのだ。だが税務局の人間にはの場合、こちらがうまく聞き取れなくて何度も聞き返したりすると「ちっ、面倒くせぇなぁこいつは」というような態度で語気を荒げてさらに早口でまくしたてられたりする。おかげで私はますます話の内容が理解できなくなる。

なぜ税務局は同じことを何度も繰り返すのだろう。

原因は、恐らく「システム的資質」と「人的資質」の2種類による。

税務局のコンピュータシステムには、その区に登記してあるすべての企業の情報が当然ながらデータベース化されているはずである。そこには当然ながら会社の住所や電話番号、法人代表者氏名及び携帯電話番号、財務担当者氏名などが入力されていることだろう。そして税務局員はそのデータベース情報を参照して、必要とあらば各企業に電話をかけてくる。会社の登記住所というのはあくまで納税するための登記住所であり、実際の運営事業所が別の場所にあるというのは、ままあることである。当社の場合、登記住所は郊外の開発区にあるのだが、事業所は都心の区内にある。そして、事業所の住所というのは、各企業の様々な事情に応じて移転することもまた、ままあるのだ。当社の場合、設立当初以来、2度移転を繰り返している。だが中国では、住所を移転しても郵政局には移転先へ郵送物を転送してくれるサービスは存在しない。また電話番号を変更したときに変更後の電話番号を通知したり転送してくれるサービスも、存在しない。つまり事業所が移転しても、データベースに入力されている会社の代表電話にかけたところで、新しい住所や電話番号を知る術はまったくないのである。このような郵政局や電話局のサービスシステムの不備が、いわゆる「システム的資質」起因する問題である。

だがその一方で、事業所が移転しようが何だろうが、法人代表者の氏名と携帯電話番号だけは変わらない。恐らく最初は会社の代表番号に電話したことだろう。だがあるとき、会社に電話したらすでに移転していてつながらない、ということがあったのだろう。税務局担当者はしかたなく法人代表者の携帯電話にかけたのだろう。そして事業所が移転した事実を知り、新しい事業所の住所と代表番号及び現在の財務担当者氏名と財務担当者の携帯電話番号を知るのだろう。あるいは、事業所が移転したら当社の財務担当者が税務局をはじめ関係当局に連絡し、移転の事実と新住所や電話番号などの新情報を伝えたはずである。

ここまではいい。問題はそのあとだ。

それらの最新情報を、税務局側では肝心のデータベース上で更新しないのである。

つまり税務局のデータベースは、会社の事業所住所や電話番号は恐らく設立当初の情報のままになっており、その後の移転にともなうデータ更新はまったくなされていない可能性が高いのだ。おまけに財務担当者氏名や財務担当者の携帯電話番号などは、最初から入力すらされていない可能性も高い。これが財務局員一人一人の業務スキルの低さ、あるいはモチベーションの低さという「人的資質」に起因する問題である(あるいは税務局のデータベースに財務担当者氏名と財務担当者の携帯電話番号を入力する欄がないのなら、それは「システム的資質」の問題でもある)。

というわけで、いつまでたっても当社の代表電話はつながらない(つながるわけがない)。だから毎回毎回、法人代表者の携帯電話にかけることになる。私はそのたびに現在の住所と電話番号と財務担当者氏名と彼の携帯電話番号を教えて、相手はそのたび「わかったわかった」と返事する。だがそのたびに、やはりデータベースは更新されずに、私が伝える最新情報は毎度毎度ブラックホールの中に消えていってしまうのだ。

不毛だ。

いや、ちょっと待てよ。あるいは(あるいは、がやたら多くて恐縮だが:笑)、税務局のデータベースは常に最新情報に更新されているのかも知れない。財務担当者の氏名も彼の携帯電話番号も入力されているのかもしれない。しかも私のお願い(私の携帯電話にはかけてこずに、財務担当者に連絡してほしい旨)も、備考欄とかにちゃんと書いてあるのかもしれない。にもかかわらず、税務局員は“敢えて”法人代表者の携帯電話にかけてくるのかもしれない。

いやがらせか?




なんでもいいけど、税務局に心からお願いしたい。

「お願いだから学習してください」

でも、このお願いそのものが「不毛」なんだろうなぁ。とほほ。

(み)

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「享楽」の是非

先日、当社のクライアント(某日系企業)の広告キャッチコピーの中に「享楽」という言葉を使ったことがある。

このコピーは当社の中国人アートディレクターの手にによるもので、コピー自体の表現テクニックとしては別にそれほど凝ったり奇をてらったものでもなく、割とオーソドックスなものなのだが、商品のコンセプトを端的に表現しているということでクライアントの中国人担当者の受けも良く、広告の出来映えとしてはまぁまぁ及第点といったところであった。

そのクライアントの中国人担当者から、相談を受けた。

「今度日本の本社に出張に行くことになり、このキャッチコピー全体の日本語の意味を本社の人に説明しなければならないので、ご教示願えないか」

私は快く引き受けたのだが、引き受けてから「ちょっと待てよ」と少し考え込んでしまった。「享楽」という言葉は中国語でも日本語でもほぼ同じ「楽しむ」という意味のはずなのだが、「享楽」という言葉自体が持つ、あるいはその言葉の周辺に漂うニュアンスは、日本と中国では微妙に異なるような気がしたのだ。

簡単に言うと、中国では「享楽」という言葉に対して比較的良い印象を持たれることが多く、日本では逆にあまり印象を持たれないのではないか、ということだ。

念のためにちなみに広辞苑で引くと「享楽=快楽にふけり楽しむこと」とある。うーむ。「快楽」に「ふける」か・・・。なるほど、というか、やはり、というか。なんか「まともに仕事もしないで日々自堕落で非建設的な快楽に浸っているどうしようもない奴」という感じがする。そういったネガティブな印象を受けるのは私だけではあるまい。確かに日本人で「享楽主義者」などと言われて喜んで「ありがとうございます」と答える人はかなり少数派なのではないだろうか。

その点、中国では「享楽」という言葉自体にはあまりそのようなニュアンスはなさそうである。本当のところはネガティブな一面も含めてもっと複雑なニュアンスがあるのかもしれないし、私も中国語の専門家ではないのでそのあたりのことについてはそれほど確固たる学術的な論拠があるわけではないのだが、今回のコピー表現について多くの中国人にヒアリングした結果、日本語が持つほどのネガティブ性はないと思われる。

だが日本でもかつて「享楽」という言葉がポジティブな意味で使われていた時期が、一時的ではあるが存在した。それは1980年代の後半、いわゆる日本中が「バブル経済」に湧いていた頃だ。

当時、広告やマーケティングの世界では「モノからコトへ(物質的充足から精神的充足へ)」というキーワードがもっともらしく語られていた。これは、1960年代から1970年代にかけての高度成長期の時代は「モノを所有すること」自体が多くの国民に共通した生活欲求であったのに対して、1980年代に入りほぼすべての国民が平均的な中流生活を達成した後では「モノを買う」こと自体よりも「どのようなライフスタイルをおくるか」ということこそが重要になるのだ、という理屈である。

それまでの日本の社会、いわゆる高度成長時代においては「堅実こそ美徳なり」という価値観がスタンダードであり、生活レベルを上げるための必需品を買うために金を使う以外は、せっせと貯蓄に励んでいたのである。そこでは「享楽」などという概念に多少の憧れはあっても一般庶民にとってはおよそ現実感の無い概念であったか、あるいは「享楽」という言葉に一種の罪悪感を感じてそういう生き方をタブー視していたはずだ。

それが1980年代に入って日本は世界有数の金持ち大国になり、国民は皆、「そうか、もう額に汗かいて働く時代じゃないんだ。これからは大手を振って金使って遊んでいいんだ」と思いこんでしまったのである。そして未曾有の好景気に湧く社会の風潮にあわせて、消費者の貪欲な消費モチベーションを刺激するありとあらゆる新しいライフスタイルや、それを表現する新しい言葉が次々と生まれてはメディアを飾り、まさに爛熟とも呼べる華やかな高度消費社会を築いていった。

当時はいまと違って日本でも雑誌メディア華々しかりし時代であり、それらの新しいライフスタイルや新しい言葉のほとんどはその「雑誌」から生まれていった。そして、先述の「モノからコトへ」というパラダイムシフトを具現化するライフスタイルとして、特に消費イノベーター群たちに多くの影響を与えていたいくつかの先進的な雑誌が「享楽主義」という言葉をこぞって使いだしたのである。

だが実際には言葉そのままに「享楽主義」と表現されることは少なく、「エピキュリズム(Epicurism=享楽主義)」や、そういうライフスタイルをおくる人々を指して「エピキュリアン(Epicurean=享楽主義者)」といった風にカタカナで表記(日本のメディアの悪いクセであるが)することで、それまで日本人が「享楽」という言葉に少なからず感じていたから一種の罪悪感を見事に消し去り、「享楽主義」というライフスタイル自体に正当性や市民権を与えることに成功した。

話が長くなってしまったが、そういうわけで1980年代の後半の頃、日本の雑誌メディアの記事にはエピキュリズム(享楽主義)やエピキュリアン(享楽主義者)という言葉が結構氾濫していたのは事実だし、そういうライフスタイルを「かっこいいもの」「オシャレなもの」「先進的なもの」として多くの消費者がポジティブに受け入れていたことも、また事実である。

いまとなっては「アホか」って感じですけど。

※追記−1
いま手元に1980年代後半に発行された、ちょっとこじゃれた雑誌がある方はページをめくってみると良い。「エピキュリアンたちの午後」とか「至福のエピキュリズム」などといった超恥ずかしい(笑)フレーズが堂々と並んでいるはずである。

※追記−2
そういえば当時雑誌でよく使われていた言葉のひとつに「スノッブ」というものもあった。思い出しただけでも恥ずかしいけど(笑)


(み)

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アントニオ猪木って何?

突然ですが質問です。

プロレスのことをほとんど何も知らない人に、「アントニオ猪木」について説明せよ。

さて、あなたはちゃんと説明できるだろうか?相手が日本で普通に暮らしている日本人であればそれほど難しくないかもしれない。だがもし相手が「海外で生活している外国人」の場合はどうだろう?

実は、この問題は私が実際に体験したことである。

私事ではあるが、私の配偶者は中国人女性である。彼女は日本語検定1級を取得してから日本に留学経験もあり、日本で医療関係の国家資格も取得し、いまは上海で日系の医療機関に勤務し、治療サポートや通訳や医療事務や患者とのコミュニケーションなどの様々な業務を行なっている。日本の文化や習慣や歴史や地理についても熟知しており、日本人の友人たちも多く、現代の日本の音楽やファッションやその他様々な流行事情や若者言葉にも長けていて、日本語のかなり高度なスラングや方言での会話もほとんど問題ない。我が家では日本のインターネットテレビを導入しているのだが、今では家事をしながら画面を見ずに背中で音声だけを聞いて、ドラマや映画の会話をはじめ、お笑い芸人たちのマシンガントークにいたるまで、普通に理解できるレベルに達している。もちろん、いまの日本のテレビ番組を賑わしている大勢のお笑い芸人たちや、著名な俳優、J-POPのアーティストたちのことについてもかなり熟知している。

その彼女とある日、日本の某バラエティ番組を見ていたときのことである。ゲストにアントニオ猪木氏が出演し、レギュラーのお笑い芸人たちに対して例の「闘魂注入」のビンタをやる、というコーナーがあり、スタジオ全体がうわーっと盛り上がったのだが、そのときに彼女が私にこうたずねた。

「ねぇ、アントニオ猪木って何?」

さーて、困った。

「彼は日本の有名なプロレスラーだよ」

こう答えたところで「プロレスラーって何?」となるのだ。

彼女は日本のことについてはかなり熟知してはいるが、それでも実は「プロレス」という格闘技についてはほとんど知識がなかった。したがってプロレスラーに関してもまったく知らない。この質問に正しく答えるためには、まず「プロレスとは何か?」というところから説明しなければならない。

「プロレス」というのは「レスリング」という格闘技の一種であること。その「レスリング」とは、2人の競技者が素手で相手と組み合って闘い、相手の両肩を1秒以上マットにつけることで勝敗を決めるスポーツであり、オリンピックの公式種目にもなっていること。「プロレス」とは、そのレスリングの中のひとつのスタイルをもとに、本来レスリングにはない「打撃技」「投げ技」「関節技」などが許され、ときには反則技や凶器を使った技なども行なわれること。アマチュア競技ではなく、専門のプロフェッショナルな選手たちによって公開の場で闘われる、極めてショー的な要素の強いエンターテインメント型のスポーツであること。元来は「プロモート・レスリング」あるいは「プロモーション・レスリング」という名の略称であるが、現在では「プロフェッショナル・レスリング」の略称として定着していること。19世紀にイギリスで始まり、のちにアメリカに広まったこと。日本人では戦後になって「日本プロレス」という競技団体が設立されてから本格的に普及したこと。その日本プロレスの代表が「力道山」という選手であり、彼が事実上の日本のプロレスの父的存在であること。戦争でアメリカに負けて多くの日本人がアメリカにコンプレックスを抱いていた戦後の日本において、屈強そうな外国人レスラーたちをその力道山が空手技でなぎ倒す姿は多くの日本人の共感を得て、当時、野球や相撲と並んで国民的スポーツとして人気を博していったこと。その後力道山の弟子的な存在であった2人のエース選手が、力道山が亡くなったあとそれぞれ「新日本プロレス」と「全日本プロレス」という2大団体を設立したのだが、その「新日本プロレス」を設立した方が、件の「アントニオ猪木」であること(ちなみに、もう一方の全日本プロレスを設立したのがジャイアント馬場である)。

と、ここまでを説明してはじめて、ようやく「アントニオ猪木」に辿り着くのである。ふぅーっ。だが、これで説明は終わりではない。アントニオ猪木がその後どのような活躍を経て、現在の日本においてはどのようなポジションにいてどのように評価・支持されているのか、そういったことまで説明しなければ、いまこのバラエティ番組になぜアントニオ猪木がゲスト出演し、なぜその際にスタジオ全体がうわーっと盛り上がるのか、その説明がつかない。

そうこうしているうちに彼女からは次の質問が飛んでくる。

「なんでアントニオって変な名前なの?日本人なの?」

「えーと、それは彼のリングネームといって、つまり芸名みたいなものでね。彼は純粋な日本人なんだけど南米のペルーで生まれで、子供の頃にブラジルに移住したこともあって・・・・・・」

「じゃぁ、なんでそのアントニオ猪木がお笑い芸人たちにビンタしてるの?」

うーーーーむ・・・・・・・。困った。

この説明のためには、まずアントニオ猪木のキャッチフレーズである「闘魂」から説明しなければならない。

「えーと、彼は昔から「闘魂」というキャッチフレーズを使っていてね、あれは「闘魂注入」という儀式でね・・・・・」

などと言っているうちにコーナーは終わってしまい、アントニオ猪木はもう画面にはいないのである。だが彼女の疑問はこれで終わりではない。

「なんでみんなビンタされて喜んでるの?」

「アントニオ猪木にビンタされるというのは、実はとてもありがたいことなんだよ。いわば神社でもらうお札みたいなものかな」

いいかげんこちらの説明も適当になってくるのだが、要するにここで私が言いたいのは、「この世界にはとても説明の難しいことがたくさんあるのだ」ということである。日本で生まれ育ち、日本で日常生活を送り、日本人とコミュニケーションしている分には、こういうややこしい説明義務というのはほとんどなく日々平穏に過ごせるのだろうが、これが外国で暮らす、あるいは外国人と日常的なコミュニケーションをする身となると、仮に相手が私の配偶者レベルの知日家であっても途端にありとあらゆる事柄について説明を要する場面に遭遇することになるのである。

というわけで、私はいつのまにか日本のテレビ番組を見ながら、ことあるごとに「これはどういう風に説明したら良いだろう?」などと考える癖がついてしまっている。慣れない人は面倒くさいと思うかもしれないが、自分自身もその事柄について良く知っているつもりでいて実は詳しく知らないことに気付かされたりして、これはこれで慣れるとけっこう面白いものである。興味のある人はぜひそういう訓練を積んでみてはいかがだろうか。そうすれば、自分自身の知識レベルを向上させることにもつながるし、いざ外国人から質問されたとでもきちんと答えられる。もちろん私の場合は、配偶者の日本語レベルが非常に高いのでまだ苦労が少ない方ではあるが。これが「英語や中国語で説明せよ」となると、はなからギブアップである。

ちなみにここで紹介したのはほんの一例であり、当然ながらほかにも様々な事柄についてこのようやりとりは頻発する。たとえば中国では野球というスポーツは全然ポピュラーではなく、したがって中国人である彼女も野球のルールや用語についてはほとんど知らないのだが、日本人同士の会話ではわりとよく野球用語を比喩的に用いることが多く、その際にどうしても補足説明が必要になるのである。

たとえばテレビでお笑い芸人たちが合コンの話をしているとしよう。

「今回のメンバーじゃ盛り上がりに欠けるな」
「助っ人に●●呼ぶか」
「あいつはすぐデッドボール投げるぜ」
「やばいな。じゃぁ△△にするか」
「あいつはボール球に手出してすぐ三振とられちゃうんだよ」
「たまに打ってもゲッツーだしな」
「いやいや、この前はスクイズ成功させたこともあるぜ」

こうなったらまったくお手上げである。説明する方も追いつかない。

(み)

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月餅を食べながら

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日付が変わってしまったが、昨日10月3日は、旧暦8月15日の十五夜、いわゆる「中秋節」である。

この日、中国では家族揃って月を愛で、月餅を食べて中秋を祝う。中秋に月を愛でる習慣は日本にもあるが、もともとは中国から伝わったものだ。ちなみに日本では月見は旧暦の9月13日にももう1回あるが、こちらは「十三夜」といって日本独自の習慣である。

私はこの日、夕方から外で配偶者の親戚たちと共に食事をし、その後実家に帰ってきてテレビで中秋節を祝う歌番組を見て、「いやぁ今日は良い月ですなぁ」などと話しながら、月餅を食べて団らんの時を過ごした。

余談ではあるが、中国では日常的にやたら歌番組が多く、基本的にどれも割に大仰な構成になっている。ましてやそれが歳時ごとに放送される特別番組となると演出や仕掛けは一層大掛かりで、日本でいうところの紅白歌合戦のような番組が、一年中何かの記念日毎に放送されているといっても過言ではない。

というわけで、大型連休に家族が揃ってそのような超大げさ歌番組をぼぉぉぉぉおっと見ながら月餅を食べてだらだらと過ごすというのは、案外悪いものではない。

と、ここでふと思ったのだが、こういう団らんの過ごし方というのは、今や日本ではあまり見られなくなってしまったのではないか、と。日本もかつては、正月、ひな祭り、花見、端午の節句、七夕、お盆、お月見、大晦日など、歳時毎に家族や親戚が集まり、一緒に食事をし、酒を酌み交わして団らんのひと時を過ごすという習慣が、どこの家庭でもごく普通に営まれていた時代があったはずだ。

だが、現代の日本では家族や一族という絆がどんどん希薄になり、親戚一同が集うという機会は下手をすると盆暮れでさえ少なくなっているのではないだろうか。正月やGWや夏休みに帰省する家庭も多いとは思うが、その際に親戚一同が集まったりする家庭はどれくらいあるだろうか。あるいは帰省などしないで家族で旅行に出かける家もあるだろう。「帰省」はいくつかある休暇の過ごし方の一つの選択肢であるというのが、現代の大部分の日本人の一般的な考え方ではないだろうか。

そういう意味では、中国は家族や一族の絆はとても濃厚である。ふだん上海や北京などの大都会で一人暮らしをしている若者たちも、国慶節や旧正月の大型休暇になると地方出身者は必ずふるさとに帰省する。何が何でも帰らなければならないのである。このあたりの徹底ぶりは、日本とは比較にならない。「悪いんだけど正月返上で仕事してくんないかな?」なんていう理屈は基本的に通用しないし、「えー?実家?親とかうるさいしぃ。親戚付き合いとかってなんかウザイんすよねー」なんて言いながら友達とグアムやハワイに行っちゃったりする輩もいないのだ。中国でそんなことしようものなら、親や親戚一同から勘当されちゃうかもしれない(上海人は帰省などしないので、中には友達と旅行に行っちゃうパターンも多いようだが)。

中国と日本、文化や習慣の違いは様々だが、家族の絆の強さという面においては、多くの日本人が忘れかけているものが中国にはまだ根強く息づいているような気がする。中国人は個人主義だという意見もよく耳にするのだが、こと「家族」というカテゴリーだけに絞ってみると日本人ほど個人主義な国民はいないのではないだろうか。月餅を食べながらそんなことを考えた中秋節であった。

それにしても私はあまり月餅が好きではないのだが、昨夜食べた胡麻餡の月餅は、なかなか美味であった。どうでもいい話ではあるが。

(み)

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テーマ : 中国
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昼食万歳@南京

前回の日記でも書いたが、国慶節&中秋節休暇で9月30日から配偶者の実家(南京)に帰省している。

というわけで、今回は中国の一般的な家庭の食卓に並ぶ平均的な家庭料理の一例を紹介してみたい。

とは言っても中国はとてつもなく広く、地域毎に料理の種類も素材も味付けも何もかもが大きく異なるので、「中国の一般的な」という表現はあまり意味をもたない。そこで、ここでは上海や江蘇省、浙江省などの華東地域(長江デルタ地帯とも言う)におけるふつうの家庭料理の一部、ということで私の配偶者の実家での家庭料理を紹介する。あらためてことわっておくが、これはあくまでこの地域の普通の家庭料理の「一例」であり、これがすべてではない。

CIMG9955.jpg
上段の左端から右へ「春菊(のようなもの)と卵のスープ」「香干(豆腐のようなもの)の細切りと香菜(パクチー)のごま油和え」「キュウリの炒め物」「タケノコの煮物」
下段左端から右へ「栗と豚肉の醤油煮(紅焼肉)」「厚揚げとしめじとソーセージの炒め物」「牛肉の薫製」「大豆とちんげん菜の醤油煮」
ちなみに「香干」というのは一般的には細切りで料理に使われることが多いのだが、原型はこんな形をしている。
CIMG9966.jpg
さつま揚げと高野豆腐を足して2で割ったような感じだろうか。うーむ・・うまく言えないが。
他には、こういうのもある。
CIMG9969.jpgCIMG9968+.jpg
左はインゲンのニンニク炒め、右はセロリとレンコンとモヤシと人参炒めで、
↓はこの右側の炒め物を焼きそばと絡めたものである。
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ざっとまぁ、これぐらいの品数が家族4人の食卓に、真っ昼間からごく普通に並ぶ。でもって、これらをおかずに白米のご飯をがっつりといただくというわけである。味付けは家庭によってそれぞれ異なるだろうが、うちの配偶者の実家の場合は、わりと薄味で日本人の私の口にも良く合う。決して身内びいきではなく、まじめに美味しいと思う。

ちなみに、見てお分かりになると思うが、とにかく中国人、とくにこの華東エリアの家庭ではやたら野菜を食べる。こと野菜に関していえば、中国人は平均的な日本人の何倍にも及ぶ量を食しているのではないだろうか。

あと、忘れてはいけないのがご存知「上海蟹」。
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もっともご当地では「上海蟹」とは呼ばず「大閘蟹」と呼ぶのが一般的で、10月〜11月にかけてが旬である。つまりまさに今がシーズンのスタートというわけで、今回が今年第1号の上海蟹となった。
ちなみにこの上海蟹、この時期上海あたりのちょっと洒落たレストランなどで食べるととても高いのだが、華東エリアにおいてはこのように普通に家庭の食卓で食べるものなので、私はバカバカしくてレストランに食べに行く気になれない。

さっそく分解してみよう。
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なんだかプラモデルみたいである。左上の甲羅の中にたっぷり詰まっている黄色いのが「ミソ」で、これがたまらなく濃厚で旨い。

せっかくだから拡大してみよう。
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さて、中国ではわりと男性が厨房に立つ家庭が多く、我が配偶者の実家も多分にもれず父親が料理全般を担っている。この父親がまた料理上手で(決して身内びいきではなく、客観的に判断してまじで旨い)、そのへんのレストランの料理と比較してもまったくひけをとらない。いや、その辺のレストランよりは旨い、と言ったほうが正確か。彼は今回紹介した料理以外にもやたらたくさんのレパートリーがあるのだが、そのどれもが、ごく普通のどこででも手に入る簡単な素材で、さくさくっと作ってしまうものばかりだ。やたら複雑な料理を作るのではなく、ごくふつうの家庭料理。だが、そのどれもが、なぜかめちゃくちゃ旨い。彼が食堂を開いたら私は毎日でも食べに行くだろう。

中でも絶品は彼が作る「炒飯(チャーハン)」だ。
CIMG9965.jpg
私は自他ともに認めるチャーハン好きで、以前からありとあらゆる中華料理店でチャーハンを食べてきているが、彼の作るチャーハンはそれらの中でもトップクラスに旨い。

というわけで、いやぁ食べた食べた。
ごちそうさまでした。


※追記:
ごく普通の家庭に、とんでもない腕前のシェフがごろごろ眠っている。
うーむ、中国恐るべし。

(み)

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閲兵式に見る建国の原点

中国では、本日10月1日は「国慶節」である。

「国慶節」とはいわゆる建国記念日であり、1949年の今日、現在の中華人民共和国が誕生して以来今年はその60周年記念というわけで、国全体が例年以上に大きな祝賀ムードに包まれている。その最大の目玉が、今日10月1日の朝から北京の天安門前広場で開催された大規模な中国人民解放軍の閲兵式(軍事パレード)だ。

解説によると閲兵式は1949年の建国以来、5年、10年の節目に開催されているらしく、今回が14回目で前回は1999年の建国50周年のときであったそうだ。つまり今年は10年ぶりの開催ということになり、しかも今年は過去最大規模だそうである。

中国では閲兵式は国を挙げての大イベントであり、中国中央テレビ(CCTV)で特番を組んで全国中継が行なわれる。国慶節は3日間の連休となっており、今年は中秋節と併せて10月1日から8日まで8日間の大型休暇となっているため、私も昨日から配偶者の実家(南京)に帰省しており、今日は朝からこの閲兵式の模様を家族と一緒にTV中継で見た。

私は中国の閲兵式の全貌をTV中継とはいえ初めて見たのだが、さすがに大規模且つ厳粛且つ華々しいものであり、それはある種の感動さえ覚える。このTV特番の視聴率がどれくらいのものなのかは知らないが、配偶者の家族の話では、恐らくほとんどの中国国民がこの中継をテレビで見ているだろうとのことだ。国家にとってだけではなく、国民にとっても重大な関心事なのである。

一般的な日本人の感覚からすると、このような軍事パレードが国家的イベントとして行なわれるというのは、なかなかうまく理解しにくいものがあるのではないだろうか。日本にも一応自衛隊の観閲式というものがあるにはある。だが自衛隊のそれは陸・海・空ごとに個別に開催されるものであり、中国ほど大規模には行なわれない。もちろん主役である防衛庁や政府にとってみれば重大な行事かもしれないが、NHKが特番を組んで全容をTV中継するわけでもなく、せいぜい夜のニュースの中で「今日こんなことがありました」ぐらいに紹介される程度の出来事でしかないし、ましてや一般的な国民にとっては恐らく大した関心事でもない(中には多大な関心を持っている人もいるだろうが、恐らくかなりの少数派であることは疑いないだろう)。そもそも自衛隊や自国の軍事力というもの自体に対する国民の関心がそれほど高いとは思えないし、仮に関心があったとしても、国家の軍事力を誇示する行事を国家的な行事として大々的に行なえる空気が、日本にはないだろう。日本はそれほど、「戦争」をイメージさせるものには敏感であり神経質だ。

中国と日本、それぞれの国家の事情が異なる以上、どちらが良くてどちらが悪いという話はナンセンスだ。だがこのたびの軍事パレードを見ていて、私はいまさらのように現代中国という国家の成り立ちを再認識したような気がした。

先の大戦で「敗戦」したところから再スタートした日本と、同じ時期に革命の内戦を経て「勝利」の上に建設された中華人民共和国。まずこの点をしっかりと踏まえなければ、現代の中国という国が持っている様々なモチベーションはなかなか簡単に理解できないのではないだろうか。


※追記:
ちなみに「閲兵」は中国語のピンインで「yuebing」と発音し、この時期(中秋)に食べる「月餅」も「yuebing」でほぼ同じである。私はちょうど月餅を食べながらTVで軍事パレードを見ていて、配偶者の父親から「中国の閲兵をどう思う?」と聞かれて「美味しいです」と答えてしまった(笑)。


(み)

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テーマ : 中国
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極限音楽狂歓節?

というタイトルを見て、一般的な日本人は何を想像するだろうか?

実は、これは去る9月26日(土)に上海市内で開催された「Xゲームと音楽のコラボレーション・イベント」のタイトルなのである。

Xゲームとは、正確にはエックスゲームズ(X Games)といい、いろいろな種類のエクストリームスポーツ(Extreme Sports)を集め、夏と冬の年2回開催されるスポーツ競技大会である。アメリカのケーブルテレビネットワークであるESPNによって開催され、アメリカを中心に全世界でテレビ放送される。競技は分類やスタイルによって多種に分けられており、その中で選手たちは金、銀、銅メダルを目指して戦う。アメリカ以外で行われるものとして、Asian X Games、Europian X Games 、Latin X Games もある。(※Wikipediaより一部抜粋http://ja.wikipedia.org/wiki/Xゲームズ

このXゲーム(あるいはエクストリーム・スポーツ)のことを中国語では「極限運動」と表現する(そのまんまと言えばそのまんまではあるが)。そのXゲームの中でも「インラインスケート(Brade or Inline skate)」「BMX(Bicycle Motocross)」「スケート・ボード(Skateboard)」の3種類は、Blade、BMX、Boardの頭文字ととって「B3」と呼ばれ、主にスケートパークと呼ばれる専用の競技施設を共有して競技が行なわれる。
ちなみにB3の中国語は以下の通りである。
●インラインスケート=直排輪滑
●BMX=小輪車
●スケートボード=滑板

今回上海で開催されたイベントは上記のB3のみに限定したXゲームに、野外ステージでのロックバンド・ライブを組み合わせて同時開催されたものだった。したがって「極限音楽」なのである。ではイベントタイトル後半の「狂歓節」は何なのかというと、「狂歓」とは「狂喜乱舞する」といった意味で、「節」は「お祭り」や「記念日」の意味である。つまり「狂歓節」とは「Exciting Carnival」にようなニュアンスだろうか。

私は当日の夕方から自社でプロデュースする別のライブイベントの準備があったので、その前にこの「極限音楽狂歓節」の現場を視察をしてみようと考え、会場となった上海市郊外のSMP SKATE PARK(SMP滑板公園 http://baike.baidu.com/view/1572097.htm)まで出かけた。
チケットCIMG9973.jpgCIMG9993.jpgCIMG9991.jpgCIMG9984.jpgCIMG0046.jpgCIMG0043.jpgCIMG0040.jpgCIMG0009.jpgCIMG0016.jpg

SMP SKATE PARKはなかなか立派なスケートパークで、資料によるとCONVICというオーストラリアの有名なパーク専門のデザイン会社(http://www.convic.com/)による設計であり「世界でも最も優れたパーク」とある。Xゲーム本場の欧米に比べると中国は競技人口も技術レベルもまだまだだと思うが、こういうハードウエア(=施設など)に関しては最初から世界トップレベルのものをぶっ立ててしまうところが、いかにも中国らしい。

実は後で知ったことなのだが、上海では今年のGWにAsian X Gamesが開催されており(http://www.kiaxgamesasia.com/ ※ちなみに冠スポンサーはKIAという韓国の自動車メーカーhttp://www.kiamotors.com/)、今回視察したパークがある「新江湾城」というエリアは、そのAsian X Gamesの主会場となった「江湾体育場」の北側に広大な郊外再開発区内に存在する。ちなみに「江湾体育場」は上海市有数のカレッジタウンである「五角城」というエリアに存在する。

なるほど。そういうことか。今回の「極限音楽狂歓節」の会場は、上海市の市街中心部からはかなり遠い辺鄙な場所で開催されており、私は現場に行くまで「こんな辺鄙なところで開催して集客できるのか?」と正直かなり疑問に思っていたのだが、会場周辺の地理関係を確認してようやく納得したのだった。たしかに辺鄙な場所で開催された割には、やたらたくさんの若者たちで会場は賑わっていた。ほろんどは近くのカレッジタウンの大学生たちなのかもしれない。

さて、会場はスケートパーク・エリアの隣に野外ステージがはじめから常設されており、Xゲームとロック・ライブのコラボレーション・イベントの会場としては申し分ない。主催は「上海市極限運動協会」。冠スポンサーはペプシコから発売されている清涼飲料の「Mountain Dew(中国語名=激浪)」となっている。

私は日本で仕事をしていた頃、マウンテンバイクやスノーボードなどのスポーツの国際大会イベント運営業務に携わっていたこともあり、今回のイベントもかなり興味深く視察させてもらった。

全体的な印象から言うと、まずイベント全体の運営システムに関して、進行のもたつき、運営スタッフ不足、各種インフォメーションの不備など、はっきり言って「甘いなぁ」という点がいくつかあったのは事実だ。

笑えたのは、野外ステージの前の観客席の最前列、つまり一番いい場所にでっかいPAブース・テントがでーんと置かれていて、観客席からはステージが良く見えない(笑)という点だった。なんじゃそりゃ、である。また、ステージで入念にテクニカル・リハをやって、さぁいよいよライブ本番というときになって、ボーカル・マイクが全然鳴らず、ADが次から次に持ってくるマイクもことごとく鳴らないという音響トラブルがあったのも「とほほ」って感じであった。何のためのテク・リハじゃ。そのあとようやくマイクが直ってさぁこれからライブだ、と思ったら1曲で強制終了させられて、いきなり競技連盟の会長とか上海市政府のエラいおっさんとかがぞろぞろ壇上に出て来て、「開会の挨拶」なんぞをはじめちゃったりして(笑)。まったく、ドリフのコントか(笑)

まぁ、言い出したらキリがないのだが、まぁそれでも上海のイベントとしてはよく頑張っている方なのかもしれない。天気もよかったし、久しぶりに青空の下で野外イベントの雰囲気を楽しめて気持ちよかったので、大概のことは多めに見てやろう(笑)。

ちなみに中国ではエクストリーム・スポーツは80年代末頃に輸入され、99年に第1回の全国大会が開催されている。全国的な競技組織の設立はそれよりまだ後で、2004年に「中国極限運動協会(Chinese Extreme Sports Association 略称CESA)http://xgames.sport.org.cn/」が設立され、競技運営、選手育成、クラブ運営、マーケティングなどを総合的に管理しているらしい。現在は国内に30以上のクラブ、200名以上の選手、1万人以上の愛好者人口がおり、年間5〜6回の全国大会や国際大会が催されているという。上海ではお目にかかる機会は少ないが、北京ではすでにかなり本格的な大会がいくつも開催されており、Xゲームの草分けであるESPNでも放映されているようである。

Xゲームにしろ、ロックにしろ、本場の欧米から見ればまだまだ発展途上の中国かもしれないが、経済成長や時代の進展とともに、これから若者たちのサブカルチャーも急速に発達してゆくことだろう。だが、経済面では上海市が中国の先陣を切って成長しているが、どうもこの手の若者のサブカルチャー分野になると、上海は北京に比べてかなり遅れている気がしないでもない。以前誰かが「歴史のある都市にしかカルチャーは育たない」と言っていたことがあるが、そういうことなのだろうか?

上海市の若者諸君よ、頑張ってくれたまえ!

(み)

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「MAO上海」ライブイベントを終えて

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去る9月26日(土)、上海に新しくオープンしたライブハウス「MAO上海」のオープニングイベントとして、当社でプロデュースした上海のインディーズ・ロックバンド・ライブイベントが行なわれた。
http://addworks.blog71.fc2.com/blog-entry-105.html

諸般の事情から、今回のイベントはメディアでの告知もほとんど行なわれず、主にインターネット掲示板やSNS、ブログなどを中心とした限定された告知であった。また翌日の日曜日は、今年は10月1日から始まる国慶節休暇(中国の建国記念日がらみの大型連休)の調整で全国的に「出勤日」となっており、土曜日とはいえ深夜にまで及ぶイベントであるため、翌日の出勤のことを考えて客足が鈍るのではないかと関係者一同やきもきしていたのだが、ふたを開けてみたら予定数800人を遥かに超えるおよそ1000人近くの観客動員となった。

中国でもトップクラスの規模を誇るといわれるライブハウス「MAO上海」の場内も身動きがとれない満員御礼状態で、場内の空気もステージ序盤から異様な興奮と熱気に包まれていた。今回は上海から2バンド、北京から1バンドを招いてのステージだったのだが、出演するバンドたちも、ライブハウスとしては従来のない規模の観客数と場内全体を包むハイテンションなノリや熱気に、普段以上にパワーアップしたステージングを披露し、曲を追う毎にステージと観客が一体となってますますヒートアップしていった。

ステージの合間には、スポンサー企業であるCASIO(http://www.casio.com.cn/)のPRタイムとして、スポンサー提供の豪華景品(腕時計、デジタルカメラ、電子楽器)が当たる観客参加型のゲームを実施。キーボードに内蔵された楽曲に合わせて赤く光る鍵盤を追いかけることで、誰でも簡単にキーボードのレッスンができるというCASIOの独自機能を使い、抽選で選ばれた観客たちが次々にステージでレッスンにチャレンジするという内容だったのだが、この企画も出演バンドのメンバー自らが進行することで観客たちの熱気を冷ますこことなく大いに盛り上がり、バンドのステージと共にイベント全体を盛り上げる相乗効果を上げることができた。

もちろん企画プロデュースとしての客観的立場に立てば、細かい点でいくつかの反省点はあるが、それでも上海のインディーズ・シーンと日系企業の初めてのコラボレーションイベントとして、さらに中国で最大級・最高品質のライブハウスと謳われた「MAO上海」のオープニングを飾るイベントとして、企画から実施まで約1ヶ月という短期決戦であった割には、まずまず成功といえる出来だったのではないかと思う。

今回の成功の背景には、すでに中国ロックの聖地・北京で確固たる実績を誇る中国ロックシーンの殿堂的存在の「MAO北京」の上海店オープン、というニュースバリューがあったことはもちろんだが、北京に比べてこれまではまだどちらかと言えばアンダーグラウンド的な世界であった上海のロックシーンが、いきなり日系企業のスポンサードのもとに鳴り物入りで陽の当たる世界に浮上した点も、大きいと思う。ネット上でも、すでに多くのロック・ファンたちの間で今回のイベントは話題になっており、MAO SHANGHAIのオープンとともに今回のイベントそのものが、ここ1〜2年で急激に成長してきた上海のインディーズ・ロック・シーンが、一気にブレイクするターニングポイントになるのではないかという気がする。

上海は、いや中国は、いよいよサブカルチャーが面白くなってきた。私自身、これを機に今後は中国のサブカルチャーの動向を追いかけていこうと思う。


※追記−1:
スタッフ諸君はお疲れさまでした。そして翌日の出勤プレッシャーをものともせずに会場に足を運んでいただき深夜まで大いにイベントを盛り上げてくれた多くの観客の皆さん、さらに何よりも今回のイベントに大いなる理解と賛同をいただいたスポンサーのCASIOの皆さんに、深く感謝を述べたいと思う。ありがとうございました。

※追記−2:
コーディネーターとして活躍してくれたY女史殿。「旅行団」のステージ写真、拝借しました。

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わびさび?

中国人の嗜好に関して、前々からずっと気になっていることがある。それは、寿司や刺身を食べる際の、わさびの使用量についてである。

上海には今や数多くの日本料理店があり、どちらかといえば居酒屋に近い店も有れば、本格的な懐石料理を提供する店もある。寿司屋もあれば、天ぷら、鉄板焼き、そば、うなぎ、うどんすき、焼き鳥、牛タン、お好み焼きなど、各種専門店も数多くあり、その数は今や500店舗を超えるとも言われている。

一般的には中華料理に比べると日本料理は価格が高いため、上海の比較的所得の高い中国人たちにとっては、日本料理を食べるのはステイタスであり、また日本料理はヘルシーであるという点からも、ちょっとしたブームにもなっていると聞く。というわけで、今や日本料理店の客層に占める中国人の割合は相当に高い。

さてその日本料理であるが、業態の違いはあれど多くの店では「刺身」あるいは「寿司」がほぼ必ずメニューの中のどこかには載っている。日本料理=寿司/刺身である。実にわかりやすい。そして刺身や寿司といえば当然ながら、「わさび」と「醤油」がつきものである。

この「わさび」の食し方が、日本人と中国人では大きく違う。

まず下の写真を見てほしい。
CIMG9661.jpg
これは某寿司屋での光景だが、写真のほぼ中央、湯のみの向かって左側にある小皿の中をご覧あれ。皿の中に何やら怪しげな緑色の物体がどかっと盛ってあるのが見えるが、あれはまぎれもなく「わさび」である。大量のわさびを小皿にたっぷりと盛り、しょうゆをかけて箸でぐりぐりとこね回して出来上がる、「濃厚なわさび醤油」だ。これを食しているのは中国人の比較的若い男性だったのだが、彼はこのおぞましい物体の盛ってある小皿に、次々に寿司をぶちこみ、べたべたとこの濃厚なわさび醤油をたっぷり付けてから、美味しそうに食べ続けていた。

日本人には信じ難い光景かもしれないが、これは「やらせ」でも「ねつ造」でも何でもない。事実である。そしてここで強調しておきたい点は、何も彼だけが特別なわけではない、ということである。私の知る限り、若者も年配者も、男性も女性も、中国人のほぼ100%に近い人々が、寿司や刺身をこのようにして食べる。

ここで素朴な疑問。

「それは、旨いのか?」

というよりも「平気なのか?」とたずねるべきか。よくもまぁ、そんな大量のわさびを付けて食べられるものだ。鼻や喉の粘膜が炎症を起こしそうで怖い。

ここまできたら素材の味もへったくれもないだろう。もはやわさびの味しかしないのではないだろうか?

それよりも何か?中国人たちの間では、どこでどう間違ったか「日本料理ってのはなぁ、刺身や寿司をたべるときに、たっぷりとわさびを醤油に溶かして食べるってのが通ってもんよ」みたいなのが定説となっているのだろうか?あるいはなんか知らんが「わさびをたくさん付ける奴が勝ち」みたいな(笑)。まさかこういう食べ方を「わびさび」だと思ってないだろうーな(笑)。

それにしても思うのだが、店の人も一言アドバイスしてやれよって。
「お客様、その食べ方は間違ってますよ」って。

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台頭する中国ロック(その2〜無料ライブイベントのお知らせ

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前回の続き。

私が中国ロックに触れるきっかけとなったのは、今月26日(土)に開催されるライブ・イベントである。当社のクライアントから「中国で活躍しているロックバンドを集めてライブイベントができないか?」というオファーを受け、当社でプロデュースすることになった。

コーディネーターとして立ってくれたのは、友人であり仕事仲間でもあるY女史。
http://mitomitoshanghai.blog99.fc2.com/
中国のインディーズ・シーンに詳しく業界とのつながりもあった彼女を通して、上海で唯一のインディーズ・レーベルの代表を紹介してもらった。会場選定については、北京で最も有名なライブハウスのひとつであるMAO北京(日系である)の上海店がオープンするタイミングと、こちらからの希望日程が近かったため、「そのオープニングイベントの一環として実施しては?」という彼らからの提案を受け、MAO上海にて決定。ちなみにここがオープンすると中国最大規模最大設備のハコになるとのこと。上海のロック・キッズたちの注目度も高く、話題性は抜群だ。

タイムテーブルは3〜4バンドの対バン形式して、間にスポンサー企業のプロモーションタイムを挟み、全体で4時間程度のイベントにしよう、というアウトラインを決め、さっそくバンドのブッキング作業に着手。スポンサーの関係で、キーボードが必ず入っているバンドという条件をクリアし、尚且つ集客力や話題性に長けたバンド、という条件でまず数バンドをピクアップ。当初は上海のインディーズ・シーンからすべて選ぼうという予定だったが、途中でどうせなら本場の北京から話題性・集客力に長けたバンドを呼ぼう、という話になり、最終的に上海から2バンド、北京から1バンドを選び、計3バンドで決定。

かくして、Shanghai Indie Band Live@MAO presented by CASIO の開催決定となった。
以下、概要である。

20090909004249b2e.jpg

日時:2009年9月26日(土)20:30〜
場所:MAO LIVEHOUSE  Shanghai
http://www.douban.com/host/maosh/
住所:上海淮海西路570号 紅坊RedHouse内 32棟(近 虹橋路)
出演バンド:MOMO、十四行詩、旅行団
協賛:CASIO(卡西欧)http://www.casio.com.cn/
チケット:無料(先着800名)
問合せ先:021−6227−7332(中国語)

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↑「MOMO」:上海のガールズバンド。映像はこちら↓
http://www.tudou.com/programs/view/H4mZhUCysAM/

p208450645.jpg
↑「十四行詩」:上海のバンド。ボーカルのキャラがユニーク。音源はこちら↓
http://www.myspace.com/sonnetshanghai

20090909004249bfd.jpg
↑「旅行団」:今回のライブイベントの目玉バンド。北京から招聘。映像はこちら↓
http://v.youku.com/v_show/id_XOTQwMDYwMzY=.html
http://v.youku.com/v_show/id_cf00XOTI0MDkwNjQ=.html

コーディネーターのY女史曰く、今回のイベントはおそらく上海のインディーズ・シーンと日系企業とが初めてタイアップして行うイベントになるのではないか、とのこと。それだけにプロデュースする側としても大きな期待感に満ちているし、これを機に中国のインディーズ・シーンを多くの日本人にも知ってほしいと思う。

今回の企画に先立ち、実際に上海のインディーズバンドのライブを視察に行ったのだが、これがものすごい熱気とパワーで、私は思わず圧倒されてしまった。私は、上海の若者たちの夜遊びといえば、クラブでナンパや一気飲みやくだらないダイスゲームに明け暮れてるだけかと思っていたら、いやいやどうして、ライブハウスがこんなに盛り上がったいたとは。ちろん、ただライブを見て盛り上がるだけではなく、自らも楽器を手にして、バンドをはじめようという若者たちもどんどん増えているらしい。以前は「上海にはロックは存在しない」と言われることもあったようだが、ここ1〜2年で状況は大きく変化しているらしい。すでにインディーズ・シーンが成熟している北京と違い、上海はまだ手垢にまみれていない。ブレイク直前の予感に満ちた上海のインディーズ・シーンを目の当たりにして、なんだかわくわくしてきた。

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台頭する中国ロック(その1

中国のロック・ミュージックについて、ある程度正確な知識をもって語れる人が日本人の中にどれほどいるだろうか。

恐らくその数は、天然記念物級に少数派であろうと思う。「中国」と「大衆音楽」というキーワードで多くの日本人が想像するのは、いまだに「テレサ・テン」ぐらいであろう。それよりなにより、日本に暮らしている大多数の平均的な日本人は、まずこう思うかもしれない。

「中国にロックがあるの?」

あくまで憶測の域を出ないのだが、多くの日本人が想像する中国の社会というのは、いまだに「高度に表現や情報が統制され、自由にモノを言うことができない窮屈な社会」というイメージではないだろうか。そして、そういった想像の先には、およそロック・ミュージックという概念は結びつかないと思う。

ロック・ミュージック=反体制的というロジックは、さすがにアナクロ的すぎて現代ではもはや陳腐とも言っても差し支えないと思うが、進化の過程で高度に細分化と多様化を重ねた現代においてもなお、ロック・ミュージックがその表現の振り幅において、常に既成概念や規制倫理に縛られない自由さを内包しているのは疑いの無いところであろう。だから、多くの日本人が想像するであろう中国社会の姿(≠自由)と、ロック(=自由)がすぐに結びつかないのは、無理からぬことなのかもしれない。

しかし、現実に中国にロック・ミュージックは存在する。そしてその実態は、多くの日本人の想像を遥かに超えて、実に多彩でアグレッシブだ。

中国におけるロック・ミュージックの歴史は、1980年代後半に一世を風靡した崔健(ツイ・ジェン)というアーティストにさかのぼる。彼は中国ロックの創始者として知られ、当時、市場経済主義を取り入れ改革開放を推進し始めた新時代の中国における若者たちのメッセージとして社会現象ともなり、数多くのロックバンド誕生へのきっかけにもなり、海外からも随分注目されたが、その後当局の活動規制などもあり、中国ロックは流行歌曲(=ポップス)に押され、若者たちの間でもなかなか確固たる地位を確立できないでいたようだ。

中国のロック・ミュージックが再び活気を帯びて来たのは2000年代に入ってからである。1990年代に地道に中国ロックを発信していた北京、成都、武漢などの都市を中心に新しい世代のアーティストたちが続々と生まれ、彼らをプロモートするインディーズ系レーベルが誕生し、活動拠点としてのライブハウスも増え、やがてそのムーブメントは各地に飛び火し、ついに大規模な野外ロックフェスティバルや大手企業がスポンサードする全国規模のアマチュアバンドコンテストなども毎年開催されるようになった(毎年北京で開催される野外ロックフェス「迷笛音楽節」は1日3〜4万もの観客動員を誇る、いまや中国最大のロックの祭典である)。その背景には、情報発信メディアとしてのインターネットや携帯電話の爆発的な普及が貢献したであろうことは、容易に想像できる。

ただし中国のロック・ミュージックはすべてインディーズである、といっても過言ではない。中国の大衆音楽シーンの主流派である流行歌曲(=ポップス)の世界には、バンドスタイルのアーティストやシンガーソングライターというのは皆無に等しい。基本的には「歌い手」と「作り手」「演奏者」はすべて別々であり、日本でいうと1980年代まで主流であった「歌謡曲」の世界に近い。そしてそれらの流行歌曲がテレビをはじめとするマスメディアとメジャー系レーベルという大資本のコントロール下にある中、カウンターカルチャーであるロックはインディーズとしてライブを中心に着々と活動の場を広げ、ファンを獲得してきたわけである。日本ではメジャーの中にロックも存在するが、中国では「メジャー=ポップス」「インディーズ=ロック」と明確に分かれている。このあたりが日本と中国の決定的な違いかもしれない。

そして現在、中国のロック・ミュージックは再び世界の注目を集めている。先述の北京での大規模ロックフェス「迷笛音楽節」には海外からの著名アーティストたちも多数参加し、海外のメディアでも紹介されている。日本人の中にも中国ロックにハマる若者たちも少しずつではあるが増えてきているようで、興味深いのは中国最大のロック・データベースというWEBサイトを作り運営しているのも実は日本人であり、このサイトは中国人ミュージシャンやジャーナリストからも参考にされているという事実だ。
http://www.yaogun.com/
http://ameblo.jp/yaogun/
実はかくいう私自身も、実は中国のロック・ミュージック・シーンについて、これまであまりにも無知であったことを告白しておこう。だが、わけあってこのたび仕事で中国のロック・ミュージックとの関わりを持つことになり、その実情を学習する中で目から鱗が落ちるような衝撃を受けたのである。

その私が中国ロックに触れるきっかけとなった件については、次号で。

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ファンキー・ウェディング(その2

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前回の続き。

日本の結婚披露宴と大きく違うのはそれだけではない。司会者のテンションがまったく違うのである。

中国でもだいたいの場合、それを専業としているプロの司会者に頼むようなのだが、これがまた並のテンションではない。のっけから「イェーイ!みんな乗ってるかー?」みたいなノリでスタートするのだ。私なんかはまずこのオープニングで腰を抜かしそうになり、思わず「2次会か!」と突っ込みを入れそうになってしまった。

しかも新郎は地味なグレーのスーツなのだが、司会者はなんと真っ白のタキシードで決めており、私は最初この男が新郎かと思ったほどであった。

そして披露宴にはおよそ「企画」とか「進行台本」などというものはほとんど存在しない。この異様なハイテンションの司会者が、その異様なテンションのままですべて独断で宴をぐいぐい引っ張ってゆくだけであり、とにかくやたらうるさい。

さらに、うるさいのは司会者だけではない。BGMがこれまたとてつもなくやかましい。

日本感覚だと、披露宴のプログラムや流れにあわせて、それぞれの場面毎に相応しいBGMを用意し、尚且つそのBGMを入れるタイミングもきちんと計算することだろう。たとえば新郎新婦入場では、まずイントロが流れ、ボーカルが入ってくるタイミングでドアオープンさせるとか、ケーキカットの場面ではケーキ入刀のタイミングでサビの部分がくるようにするとか、さらにスピーチの間は当然BGMはカットするだろうし、歓談タイムのときだって会話の邪魔にならない音量にするとか、花束贈呈のときには泣ける曲を持ってくるとか、そういたことだ。

ところが中国の披露宴は違う。最初から最後までのべつまくなく大音量で音楽がなりっぱなしで、しかもそれらの楽曲には選曲のテーマとかコンセプトというものがまったくない。洋楽のバラードがかかったかと思うと次は中国の民謡がかかり、その次に中国系の旋律の妙なユーロビートがかかったり、とまったく脈絡がない。おまけにそれらの楽曲は、唐突に曲の途中から始まり、曲の途中で唐突にブチッと切れ、次の曲が唐突に始まる、という「唐突のスパイラル」状態なのである。私に言わせれば、披露宴の流れにはひとつのストーリがあるわけであり、それにあわせて楽曲のつなぎ方にもストーリーがあると思うのだが、そんなものは一切おかまい無しのノンストップ・パワープレイ(笑)が続くのである。

さらに、その大音量脈略無しパワープレイにかぶせて主賓のスピーチが重なってくるから余計に始末がわるい(このときもBGMの音量はそのまま維持されている)。BGMがうるさいものだがから、当然スピーチする本人も大声でがなる。大声でがなるからマイクの音が割れる。バックには大音脈略無しパワープレイが容赦なくかぶさってくる。そして音響担当者はなんのつもりか、スピーチの途中で「ボヨヨ〜ン」とか「ブ〜」とか、そういった妙な効果音を入れまくる。もうとにかくうるさいったらありゃしない(笑)。

そしてスピーチが終わると今度は、新郎の友人らしき若い男の子がギターなんぞを持ち出してきて弾き語りを始めるのだが、これがまた、ギターのチューニングが合ってない上に、曲のコードもデタラメで、おまけに信じられないくらい音痴だった(笑)。しかも言うまでもないが「大音量」である(笑)。

そして究極のぶったまげプログラムは、司会者自らの「歌」である。

なんと披露宴の途中から、司会者自らが「それではここで新郎新婦の門出を祝して、私から歌をプレゼントしましょー!」と言って、いきなりカラオケで歌いだしたのである。しかもその曲は、千昌夫の「北国の春」(笑)。

参考までに申し上げれば、あの歌の歌詞は「都会で暮らす男性が実家から届いた小包を受け取り、早春期の故郷や家族、かつての恋心などを想う内容」であり、およそ結婚披露宴とはなーんの接点もない。しかも季節は夏ど真ん中。春でもなんでもない。

恐らく「北国の春」は、あの司会者の十八番なのであろう。歌いたくでしょうがなかったのだろう。まあ、そういうことなら1曲ぐらいしょうがない、聞いてやろうじゃないか、と思っていたら立て続けに6曲ぐらい歌うではないか(笑)。しかもステージで大人しく歌うならまだしも、会場の花道をゆっくり歩きながら各テーブルを回り、出席者一人一人と握手なんかし始める始末(笑)。会場全体もそういう雰囲気を大歓迎する空気であり、誰もいいやな顔ひとつせずに、一人で歌いまくる司会者に黄色い声援を送り、一緒に記念写真なんか摂ったりしている。もうこうなったら結婚披露宴でもなんでもなく、司会者のワンマンショーである。

そして歌い終わったら我々の座っていたテーブルにやってきて(席が1席空いていた)、ばくばくと料理を食べ始めるではないか(笑)。もう、やりたい放題である。

他にもいろいろとぶったまげた出来事はたくさんあったのだが、この司会者のあまりのインパクトに、ほとんど霞んでしまった。おかげで私は新郎新婦の顔さえ思い出せない。最初から最後までドタバタした出来の悪いコントを見てたようでもある。そういう意味では「感動」や「涙」はかけらもなかったが、「笑い」だけはふんだんにあった。それも私から見れば「苦笑」なのだが。とにかく、ファンキーな披露宴であったことは間違いない。いやぁ、笑わせていただきました。ごちそうさま。

(み)

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ファンキー・ウエディング(その1

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ちょっと前のことだが、配偶者(中国人)の友人の結婚披露宴に出席した。

出席経験のある方ならおわかりになると思うが、中国における中国人の結婚披露宴というのは、実にファンキーだ。

日本人が考える結婚披露宴は、専門式場だったりホテルだったりレストランだったりと、スタイルこそ様々ではあるが、どんなスタイルであっても共通しているのは、何かしらの「厳粛さ」「神聖さ」であったり、あるいは「華麗さ」「フォーマルさ」である。したがって出席者一同もそれなりにきちんとした正装で臨むのが通例だ。かつては男性はいわゆる「礼服」と呼ばれるブラックスーツ&ホワイトタイ、女性は黒の和服や黒のワンピースが多かったが、近年は若い世代を中心に男性もカラータイやブラック以外のスーツ(中にはタキシードなども)、女性も華やかでカラフルなワンピースドレスというように、様々なオシャレを楽しむ傾向になってきた。そこには「フォーマル」という晴れやかな場所や時間を積極的に楽しもうとするライフスタイルがあり、また新郎新婦の友人たちを中心とした若い独身出席者たちにとっては「上質な出会い」の機会でもあるため、それだけにより積極的にオシャレを楽しもうとする傾向も強い。

もちろん厳粛かつ神聖なのは、「挙式」と「披露宴の前半」(新郎新婦入場〜仲人による新郎新婦紹介〜主賓の祝辞〜ケーキ入刀〜乾杯の音頭まで)の一連の「セレモニータイム」であり、この間は物音一つ、咳払い一つにも神経を払わなければならない雰囲気が漂う。だがそのあとの「お色直し」「キャンドルサービス」を経た後の「歓談タイム」や「ご来賓の方々の余興」なんていう時間帯は酒が入ることもあって多少くだけた感じにはなる。親戚のおじさんが酔っぱらった勢いで詩吟なんか唸ったり、新郎の悪友たちが新郎を乾杯の一気攻めにしたり、新婦の友人たちがモーニング娘なんか歌ったりする時間帯だ。それでも締めくくりの「両親への手紙」とか「花束贈呈」「両親からの挨拶」といった時間帯は、これまたぐっと静粛且つ情緒的な雰囲気に包まれる。

これら一連の流れはある程度定型化されいるとはいえ、「起承転結」があり、出席者の「感動」や「笑い」「涙」を誘う演出というものが施される。そのために運営する側ーーーつまり会場側だったり、専門のプランニング会社だったり、友人たちだったりーーーは事前に必ず綿密な企画を練り、進行台本や運営マニュアルを作成し、効果的な音楽や照明や特殊効果(スモークなど)の演出プランを考え、本番時には淀みなく、恙(つつが)無く進行することに徹する。挙式や披露宴は、「一生に一度(あくまで原則だが:笑)」のおめでたい晴れ舞台であり、それだけに進行中のアクシデントは「新郎新婦の門出を汚す」ものであり「絶対にあってはならない」ものだ。だから運営スタッフ側も進行には万全を期してミスのないように取り組む。間違っても「ぶっつけ本番」というのは、少なくとも私が知る限りではあまり見たことがない。

さて、話を中国の披露宴に戻そう。

中国ではまず「挙式」というものはほとんど行なわれず、披露宴だけを行なう場合が多い。そして全体の流れは、新郎新婦入場に始まり、ケーキ入刀、両親の挨拶(中国ではこれを最初にやる)、乾杯などがあり、その後お色直しを経てキャンドルサービスや来賓の余興があり、最後は司会者が締めくくって終わる、というパターンが一般的のようだ。この流れだけをみると日本とそれほど変わらないように思えるが、これがふたを開けてみると、実に驚愕の内容なのである。まったく別物だといっても過言ではない。

何が違うかというと、まず出席者のファッションをはじめとした「場の全体」を包む空気に「厳粛さ」とか「神聖さ」あるいは「華麗さ」「フォーマルさ」といった要素が、これっぽっちもない。

出席者はおおむね普段着である。夏場であることもあるのだが、男性で上着を着用しているのは新郎と伴郎(介添え)と司会者ぐらいであり、残りはTシャツやポロシャツや半袖シャツ1枚が多く、女性もTシャツやふつうのワンピースが中心。近所の市場に夕飯のおかずを買いに行ったついでにそのまま披露宴に出席しました、という雰囲気だ。もちろんシャツもパンツもワンピースも、特段オシャレなやつでも何でもなく、当然だがプレスなんかしてない。「昨日着たのを今日も着てますが、何か?」という感じ。

さすがに新郎新婦を見ると、新郎はスーツ、新婦はウエディングドレスと、まぁ「新郎新婦らしい」衣装を身にまとってはいるが、それでも新郎のスーツはサラリーマンが普段着るような地味なグレーのスーツで、新婦の横にいるから新郎に見えるが、もし一人だったらぜったい新郎には見えない。

私は配偶者から事前に「お願いだからスーツなんか着ないでね」と何度も言われた意味がようやくわかった。これで私がお気に入りのブラックスーツなんか着ていったら、新郎よりも新郎らしくなってしまうか、あるいは会場となったレストランのマネージャーと間違われてしまう(笑)。

かくして中国の結婚披露宴は、私の驚愕などはまったくおかまいなしに進行してゆくのである。

※以下次号へ続く

(み)

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時刻表ロマン(その2

新たに購入した時刻表はなかなかのモノだった。

前回購入した薄っぺらいやつは華東地域版だったが、今回は全国版である。明らかに内容量が違う。
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中を開けるとまず目次。上から順番に「列車番号別時刻」「北京ー広州方面」「北京ー甘粛省方面」「北京ー上海方面」「北京ー香港方面」「北京ーハルピン方面」「北京ー内モンゴル方面」「広州ー香港間」「国際列車」「普通列車」「主要駅別時刻」をそれぞれ指している。
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続いて全国鉄道路線網MAP。広大な国土をあまねく網羅しているのがわかる。
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そして肝心の時刻ページ。まず列車番号別の時刻ページである。ここでは主に新幹線の時刻をまとめてある(列車番号の頭がDではじまるのは新幹線である)。
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続いて北京ー上海間。
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次は北京や上海から香港(九龍)までの列車時刻。
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そしていよいよ国際列車。まずはモンゴルのウランバードルや、ロシアのモスクワまでの列車。いわゆる「シベリア大陸横断鉄道」である。北京を23:00に出発した列車は5日目の夕方にようやくモスクワに到着する。大陸は広大なのだ。
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さらに北朝鮮の平壌行きの列車も掲載されている。当たり前のことなのだが、あらためて中国と北朝鮮が地続きあることを再認識させられる。リアルだ。
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というわけで、もう時刻を見ているだけで、中国各地やユーラシア大陸の広大な風景の中を、重量感あふれる鋼鉄製のディーゼル機関車が何十輛ものこれまた無骨な鋼鉄製の客車を牽引し、汽笛を轟かせながら走り抜ける光景がありありと浮かんできて胸が躍る。

私は中国で暮らして5年になるが、まだ夜汽車に揺られて遥か大陸の彼方まで出かける機会に恵まれていない。せかっく中国に暮らしているのだから、やはりいつか列車での長旅を経験してみたいと思う。なかなかヒマがないんだけれど。

※ネット上には、中国の鉄道や時刻表のことを詳しく調べている日本語のサイトがたくさんあります。みなさん天晴れです。感服しました。

「中国鉄道倶楽部」
http://railway.org.cn/index.html

「中国鉄道研究」
http://www.chinarailway.jp/

「中国旅遊研究会」
http://www.chinatrg.com/china.html

(み)

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時刻表ロマン(その1

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中国における重要な交通手段は「鉄道」である。

もちろん現代では飛行機や自動車による移動も欧米や日本同様に盛んで、国内線の航空路線網や都市間高速道路網がそれこそ網の目のように大陸中を網羅しているのも事実だが、だからといって鉄道が衰退しつつあるかといえば、全くそんなことはない。欧米や日本においては鉄道は衰退の一途を辿るばかりであるのに対し、中国では鉄道の存在感や必要性はまだまだ健在で、むしろ現在もなお発展の最中にあるといえよう。

私は、世の多くの中年男性諸氏がそうであったように、子供の頃(1960年代〜1970年代)は「鉄道少年」であった。いまのJRがまだ「国鉄」と呼ばれていた頃で、SL(蒸気機関車)が現役で活躍し、新幹線といえば東海道新幹線であり(新幹線が博多まで延伸したのは1975年になってからである)、在来線の特急列車や急行列車が今よりももっと多くの種類に満ち、今よりももっと存在感を示していた。中でも花形中の花形が「ブルートレイン」であり、駅でその勇姿を見かけるたびに、あるいは乗車の機会があるたびに、心を躍らせたものである。そして他の鉄道少年と同じように、当時の私の愛読書のひとつが「時刻表」であった。

興味の無い人からすれば「あんな細かい数字だらけの本のどこがおもしろいんだ?」となるが、こちら側からしてみれば「あんなに面白い本はない」という論理になる。何しろ全国すべてのJR線と私鉄網のすべての路線が網羅されているばかりか、地下鉄、主要バス路線、航路、航空路、はてはケーブルカーやロープウエイ、定期観光バスの時刻まで網羅され、おまけに全国の主要ホテル一覧なども掲載されている。様々なキップの種類や運賃の計算方法まで懇切丁寧に説明されているし、主要駅構内図や主要列車の編成も載っている。まぁ、時刻表の面白さ、楽しさを語り始めたら止まらなくなるのでこのへんで止めておくが、そういうわけで元鉄道少年だった私はいま、世界に名だたる鉄道王国の中国に暮らす中で、当然のごとく時刻表を探し求めた。

中国の鉄道は基本的に中・長距離列車が中心で、日本のような近距離通勤列車はほとんどない。その代わり大都市の場合は、地下鉄が都市と郊外の住宅地を結ぶことで、近距離通勤列車の役割を担っている。そして、中国の広大な大陸を、網の目のように鉄道が走り、その上を様々な中・長距離列車が走っている。中国は広大なので長距離列車となると数十時間、中には50時間以上もかけて走るものもあり、日本では天然記念物級になってしまった寝台列車や食堂車が当然のように連結されている。全国的には電化はまだまだそんなに進んでおらず、ほとんどはディーゼル機関車が客車を牽引するタイプなので、それ故にディーゼル機関車の切ない汽笛音や、始動時や制動時に連結器同士が出すガチャンガチャンという金属音が、旅情を一段と盛り上げてくれる。中にはまだまだSL(蒸気機関車)が現役で走っているところもあるという。当然ながら大陸なので、他国との間を結ぶ国際列車も走っている。さらに近年では大都市間の電化が促進され、2007年からは日本の新幹線をはじめ欧州やカナダの高速鉄道の車両も技術輸入されて走っているのだ。これほど元鉄道少年の血が騒ぐ国もない。きっと時刻表もそういうロマンが凝縮されているに違いない。

ところがどういうわけか今までまともな時刻表に巡り会う機会がなかった。最初は「そんなもの簡単に買えるだろう」と思っていたのだが、いざ買おうと思うとどこにも売ってない。いくつかの書店を見て回ったこともあるが、そのときはどこの書店にもなく(あるいはいつも品切れだったのかもしれないが)、途方に暮れてうちの会社のスタッフたちに尋ねたら「ネットで検索できますよ」という回答しか返ってこない。「いや、ネットじゃなくて、本になってるやつ、知らない?」と聞いても「さぁ?そんなものあるんですかねえ?ネットのほうが便利じゃないですか」とまるで要領を得ない。私は時刻を調べたいのではない。「時刻表という書籍」が欲しいのだ。だが実際、回りの中国人が時刻表を見ている場面に遭遇したこともないし、うちの会社のスタッフたちも、地方出身者が実家に帰省するときに、最近でこそオフィスのパソコンからネットで検索して時刻を調べてキップを買いに行っているが、4〜5年前なら駅へ行って時刻を確認して「さて、何日の何時の汽車のキップを買おうかな」なんてやってたのだ。そんなわけで私は勝手に「そうか。中国にはちゃんとした時刻表はないのかもしれない」などと勝手な誤解をしてしまっていた。

私が初めて中国の時刻表を入手しゅたのは今から2年ほど前、ちょうど上海を中心に日本の新幹線が導入された頃だ。その写真がこれだ。
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あまりにも薄っぺらい。しかも上海を中心とした華東地域しか網羅されていない。しかも中の表組のレイアウトも雑で、なんだか見にくい。うーむ、こんなものかと少々期待はずれで私は消沈していた。

ところがつい先日、私は上海市内の大型書店でついにちゃんとした時刻表を発見した。思わず「やった!発見!」と小躍りして、当然ながら即購入。その名も「全国鉄路旅客列車時刻表」A5版、全444頁のなかなか立派なものだ。
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中国には私鉄がないし、鉄道以外の交通手段の時刻は掲載されていないので、さすがに日本でJRやJTBが発行しているA4版の大型時刻表ほどのボリュームはないが、キオスクなどでよく売ってるポケット時刻表ぐらいのボリュームはある。中国ではこれがスタンダードのようである。

私は期待に胸を膨らませてページをめくった。
※以下次号へ続く。

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上海電脳購買事情(その2

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というわけで、うちのデザイナーを連れて上海市内の某電脳城へ。目指すはPCパーツの専門店である。

完成品を買うのではなくパーツをバラで買って自作PCを組み立てる人は、日本にもいると聞く。だが、そういう人はあくまでかなりのマニアではないだろうか。一般のユーザーが自作PCを組み立てるという話は、あまり聞いたことがない。だが中国では自作PCの組み立てはマニアだけの世界ではなく、一般ユーザーの間でも普通の習慣になっているようだ。

そういう事情もあってか、うちのデザイナーたちも含めて、上海の若者たちはパソコン関係のテクニカルな知識に長けている者が実に多い。日本ではどちらかというと「オタク」の聖域みたいな感のある自作PCの世界だが、上海ではふつうにそのへんの女の子たちも怪しげなパーツ屋に出入りしていたりする。

オリジナルマシンは、まずCPUを含めた「マザーボード」を決め、「メモリ」「ハードディスク」「グラフィックボード」「CD/DVDドライブ」「電源」などを順に選んでゆく。私はずっとMacユーザーなので自作PCなどというマニアックな世界とはこれまでまったく無縁で、なんかものすごく難解な世界のイメージが強かったのだが、こうやって実際にパーツ屋に来てみるとそれほど遠い世界のことでもないことがよくわかる。

うちのデザイナー君が今回選んだマザーボードは「ASUS P5Q SE PLUS」というやつで、CPUはIntel Core2Duo、チップセットはIntel P45、FSB 1600MHz、デュアルチャネルDDR2 1200MHz対応・・・・といったスペックが並ぶ。彼に言わせると「まぁまぁのレベル。悪くない」のだそうだ。

ちなみに、これらの自作PC用パーツ類の値段だが、日本と比べるとどうなのだろうと思い、ちょっと調べてみた。CPUが安いもので100元(約1,400円)〜高いもので2,200元(約3万円)ぐらい、マザーボードが安いもので500元(約7,000円)〜高いもので5,000元(7万円)までと、それこそ千差万別なのだが、同タイプのものを日本と比べると実勢価格は日本も中国もほとんど変わらない。今回我々が購入したASUS P5Q SE PLUSは実勢価格が800元(約11,200円)だったが、これは日本と比べてもほとんど変わらない価格のようである。

結論からいうと我々が今回組み上げたデザイナー用PCは本体のみで総額3,800元(約53,200円)だった。まぁデザイナーが使うPCとしては、性能とのバランスで考えるとけっこうお得な買物ができたのではないかと思う。安かったのでついでに財務で使う税務処理用のPCも必要だったので自作したのだが、これは本体のみで総額2,400元(33,600円)だったので、2台あわせて合計約6200元(約86,800円)ということになる。上出来だ。

ところで、我々が購入している隣で、中国人のカップルがやはり同じように自作PCを購入していたのだが、彼らはどうやらパソコン関係のテクニカルな知識が皆無だったようで、やたら高いパーツばかりを勧められて1台7000元(約10万円)の買物になっていた(スペックはうちが組み上げたデザイナー用のPCと同レベルだ)。我々はその値段以下で2台買えたというのに・・・。あとで店員にこっそり聞いてみると「悪いけど彼らからはたっぷり儲けさせてもらったよ」と言って笑っていた。

やれやれ。素人が知ったかぶりして行くとエラい目に遭うのが、この電脳ラビリンス(迷宮)の掟なのだ。

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上海電脳購買事情

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オフィスで使うデザイナー用のPCを新たに買うことになり、電脳城に出かけた。

「電脳城」というのはパソコンをはじめとするあらゆる電子機器を販売する大型商業ビルのことを指す(中国語で「電脳」とはパソコンの意味だ)。だがその業態は、たとえばビッグカメラやヨドバシカメラのように1社で全ての売り場を運営するいわゆる「量販店」とは違い、多数の小さな専門店がテナントとして入居して全体を構成している「大型雑居ビル」である。どちらかというと秋葉原ラジオデパートのようなイメージだろうか。取り扱っている商品も、パソコンをはじめ、ディスプレイやプリンタ、スキャナ、ハーディディスクなどの周辺機器、各種パーツ類、アクセサリー類、さらにデジタルカメラ、携帯電話、AV機器にいたるまで、ありとあらゆる電子機器とその関連商品がところ狭しと並ぶ。

ビルの規模こそ百貨店や量販店のような規模だが、中身は先述の通り「雑居ビル」なので、百貨店や量販店のような理路整然とした売り場構成や統一感などはひとかけらもない。何となく1階はPCを扱っている店が多く、2階は周辺機器が多くて、3階は携帯電話の店が中心で・・・といった非常におおざっぱなカテゴライズがあるにはあるのだが、それも厳密ではない。基本的には、ビル内に入居している何百もの各テナントが、それぞれに好き勝手なことをやっているといったほうが正しい。

日本の量販店なら、パソコン売り場、デジカメ売り場、周辺機器売り場、アクセサリー売り場などが整然と分かれており、それぞれの売り場の中で、さらにメーカー別とか商品ジャンル別とかに細分化されているので、目的の商品を捜すのが実に簡単である。しかも店員は皆接客マナーも良く、親切なので、機械音痴の初心者でもそれほど困ることはない。

だが、中国の電脳城は巨大な闇市の城のようなものであり、いわば「ラビリンス(迷宮)」である。だから初心者はどの店で買えば良いのか最初はまったく見当もつかない。そして、各テナントの店員たちも、はっきり言って決して優しくない。安いアクセサリーしか買わないような客はあからさまに邪険にされるし、相手が素人だとわかると平気でぼったくったり粗悪品をつかまされたりする。「こっちは客なんだから」などという奢った考えで行くとたちまち返り討ちに会う。売る方も買う方も真剣勝負だ。並んでいる商品こそパソコンやデジタルカメラなどだが、業態としては野菜や魚を売っている「市場」となんら変わりはない。たくさんの店を見て回り、商品やサービスを目利きし、店員と駆け引きしながら、最終的にどの店でいくらで買うかを決める。定価やメーカー希望小売価格など何の意味もない。

さて前置きが長くなってしまった。パソコンを買った話であった。

世界のパソコン市場では言うまでもなく圧倒的にWindowsマシンが多数派を占めているのだが、ことクリエイティブの世界ではパソコンと言えば、伝統的、圧倒的にApple Macintoshが多数派である。したがって私個人も、パソコンは20年前からMac一筋である。だが中国では広告クリエイティブの世界でもWindowsが圧倒的多数派なのである。

なぜか?答えは簡単。それはMacが高いからである。

中国のデザイナーたちもMacのクオリティやパフォーマンス、ステータスは良く理解している。世界中のクリエイティブの現場で主流派であることも知っている。だが、欧米などに比べるとまだ可処分所得の低い中国のデザイナーたちにとっては、何と言ってもMacの価格の高さはなかなか簡単には手が出せない。その点Windows系のマシンは市場シェアがでかい分だけ価格も安い。クリエイティブワークに不可欠なillustratorやphotoshopといったアプリケーションソフトだって全く問題なく使える。というわけでWindows系マシンが主流となっているのである。

では中国のデザイナーたちの間ではどこのPCブランドが人気なのか?

実はどこのブランドでもない。中国のデザイナーたちは(Macユーザー以外は)PCを買う時にまず完成品を買わない。Windowsユーザーであれば、基本的にはほとんどの者たちがパーツをバラで買ってオリジナルマシンを組み立てるのである。

そういうわけで今回電脳城に出かけたのも、完成品を買うためではなくオリジナルマシンを作るためである。では詳細は次回へ続くーーーー。

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中国の景気回復は本物か?

昨年のリーマンショック以来、欧米諸国は景気が低迷したままで一向に回復しない状態だが、一方で日本以外のアジア諸国はすでに先陣を切って回復基調にあるという。その先鋒が中国とインドだ。

中国は昨年のリーマンショック後、世界に先駆けて大規模な景気刺激策を打ち出し、国内の早期景気回復に向けた強いリーダーシップを示した。その内容は、4兆元(=約57兆円)もの規模の公共投資と、7兆元(約100兆円)もの規模の融資拡大策である。これらの政策が功を奏したのか、今年に入って中国は急速に景気回復に向かっているのだという。

昨年後半、一時的に中国の自動車販売台数が下方に向かい、「中国のバブルもこれまでか」と思われたが、今年前半、中国の日系の自動車メーカーは軒並み販売台数が昨年を大きく上回った。上海株式市場の平均株価はリーマンショック後の水準から一挙に2倍まで回復し、下落を続けていた大都市の不動産も今年中盤以降、一転して急上昇している。そして政府が発表した今年上半期のGDPは前年比で7.1%成長したという。

これらの事実をもとに、日系大手金融機関のアナリストたちも今後の予測に関してかなり希望に満ちた観測を示している。

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0530&f=business_0530_005.shtml
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090623-00000054-scn-bus_all

しかし、だ。この景気回復に対してかなり懐疑的な見方も、一方で存在する。今年上半期の消費者物価指数(CPI)は前年同期比で1.1%減となっており、しかも6月単独では1.7%減なので、「消費」自体はむしろ縮小気味だということが言える。大都市の高層オフィス・ビルの多くは賃貸料を下げても借り手がつかず、高級賃貸マンションは入居者が埋まらない。だが、不動産への投資は活気づいていて不動産価格は上がり続けている。国有企業についても、決して業績自体は改善していないのに、株価だけが上昇しているという。

これはどういうことだろう?

中国政府の景気刺激策の狙いは、政府が公共投資を中心に財政支出を増やし、銀行が国有企業向けを中心に融資を拡大し、国有企業の固定資産投資を増やし、その結果GDPが上昇する、というシナリオだ。だが、実際には国有企業も輸出が冷え込んでいる中では、いくら金を貸してもらってもおいそれとは大規模な設備投資には踏み切れない。したがって、借りた分は、自ずと株式や不動産への投資に流れる。その結果、株価や不動産価格が高騰する。今年に入ってから新規に実施された7兆元もの融資は、実のところ20%が株式市場に、30%が不動産市場に流れているのだそうだ。また、自動車販売台数の増加にしても、大規模な融資を受けた国有企業がその金を使って車を大量に購入している影響も大きいといわれ(たとえば政府の役人などへの贈答用として車をプレゼントしている、なども含めて)、別に一般市民の購買が加速しているわけでもなさそうだ。GDPは前年比7.1%の伸びだが、政府が経済活動につぎ込んだ金は前年比196%増だという。つまり、国家が膨大な金をつぎ込んだ分だけGDPが上がっただけであり、決して純粋に景気が回復したとは言えない、という理屈だ。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/other/283978/
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/288074/
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20090722/200630/?P=3

こういうのを、「バブル」っていうんじゃなかったっけ?

(み)

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テーマ : 中国
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DIYブーム到来

昨今の上海の消費市場、中でも若い女性の消費市場を語る重要キーワードのひとつに「DIY」がある。

中国語ではDIYのことを「手工」と言うのだが、街を歩くとこの「手工」あるいは「DIY」という看板があちこちに目立つようになり、雑誌なども同じように「手工」や「DIY」の文字が踊るものが増えた。ネット上には様々なDIYポータルサイトも誕生し、衣類からアクセサリー、雑貨、家具、化粧品にいたるまで、ありとあらゆるジャンルのノウハウが提供され、作品が紹介されている。

diy手工生活時尚網
http://www.diysg.com/

DIY大全
http://www.diy114.cn/

DIY手工倶楽部
http://www.6diy.com/index.php


DIY(Do It Yourself)は文字通り「自分自身の手で作る」という意味だが、この言葉には2つの概念がある。ひとつ目は必要に迫られて行なう場合であり、もうひとつはあくまで趣味などライフスタイルとして行なう場合である。日本では昔から「日曜大工」という概念があり、家庭でお父さんが犬小屋を作ったり、屋根の雨漏りを修繕したりすることは日常的に行なわれていたが、1970年代頃にアメリカから「ホームセンター」という流通業態と共に「DIY」という概念が輸入されると一気に市民権を得て、それ以降、大工仕事だけではなく幅広い手作り作業全般を「DIY」と呼ぶようになった。

中国でも昔から暮らしの中で手作業は日常的に行なわれて来てはいたが、それはあくまで「必要に迫られて」あるいは「他に手段がなく」という、どちらかというとネガティブな動機によるものだったと思う。それが、近年の急激な経済成長で都市部の市民を中心に所得がぐんぐん増え皆が豊かになってくると、それまで何でも自分たちの手でやってきたことでもお金を払って誰かに頼むようになる、あるいは買ったほうが早い物は買うようになる。これは社会が進展してゆく中でごく当たり前の過程であろう。

現代社会におけるDIY普及へのシナリオは、概ね下記のようなパターンだと思われる。

1)社会全体が未成熟
  ↓
2)必要に迫られて自分の手で何でもやる
  ↓
3)経済成長とともに所得が増えて豊かになる
  ↓
4)社会全体が成熟し様々な商品やサービスが誕生する
  ↓
5)金で解決できるものは金で解決したくなる
  ↓
6)生活に余裕ができる
  ↓
7)余暇を楽しみたくなる
  ↓
8)趣味として自分の手でいろんなものを作りたくなる(=DIY)
  ↓
9)DIYを支援する様々な商品やサービスが生まれる

上海も最近までは5)〜6)の段階だったはずなのだが、ここ1年ほどで急激に9)の段階にまで進化してきている。

そういえば私が上海にやってきた2004年頃は、周囲の中国人たちに「趣味は?」とたずねてもあまりパッとした答えが返ってこなくて「へぇ、そんなものなのか」と思っていたのだが、最近のDIYブームが気になって周囲の中国人たちに「趣味は?」とたずねると、かなりの確率でDIYがらみの答えが返ってくる。

さて、そういうわけでDIYの市場ニーズはかなり高まっていることは事実だが、気になるのはDIYを総合的に支援してくれるサービスや流通がどうなるかである。現状ではDIYで欲しい物があればそれぞれのジャンルごとに小売店や卸業者が集積している「市場」に出向いて、部品やら材料やらを仕入れるのが通例だが、慣れている人ならともかく、素人だと正直かなり煩雑である。今のところあらゆるジャンルを網羅してDIYを総合的に支援する業態ーーーたとえば「東急ハンズ」のようなーーーはまだ見当たらないのだが、いずれ近い将来、そのような業態が誕生する日も近いのだろうか?

(み)

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Author:上海addworks
ともすれば、ブランディングだ、パブリシティだ、プロモーションだ、クロスメディアだ、クリエイティブメディアだ、レスポンスアドだ、プロダクトプレースメントだ、インフルエンサーだ、OOHMだ、AISASだ、SEMだ、SEOだ、CPCだ、CPOだ、CRMだ、WOMだ、CGMだ・・・・・と

なんだか言葉の波にもまれてしまいそうな世の中ではありますが、大切なことは「誰に」「何を」伝えるべきなのか、というとてもシンプルな問いかけなのだと思います。そして、その伝えるべきメッセージと相手との接点にあるものが「クリエイティブ」です。

それは、デザインやコピーといった表現テクニックだけではなく、リサーチや分析といった机上のプランニングだけでもない。たくさんの経験と、ノウハウと、アイデアと、テクニックと、センス、消費者の目線、そして何よりもクライアントと情報や想いを共有し、伝えるべき商品やサービスを心から愛し、真剣にクライアントやターゲットの気持ちになって考えられる情熱。それらの全てが揃って、はじめてかたちにすることができるものです。

「とりあえずカタログやパンフを作らなきゃいけないけど、どうすれば?」とか「とにかく売りにつながる販促施策を」といった悩みから、「コミュニケーション戦略全体をトータルで考えたい」とか「ブランド・コミュニケーションのあり方を改めて見直したい」といった課題まで、クリエイティブがかかわる領域は、実はとても広い。

私たちにできることは、クリエイティブで、その悩みや課題に応えること。常にコミュニケーション全体を横断的に見渡す視点に立ち、愛と、情熱をもってクリエイティブを考え、かたちにします。困った時、何かにひらめいたとき、ここいちばんの勝負どき、私たち上海アドワークスにぜひご相談ください。

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